第10章 本当の出会い
万愛の術式にも記憶損失はひょっとしたら関係しているのかもしれない。
彼女の呪力は変わった場所にこもる特異体質だからね。
とにかく僕は元の世界に戻って、死滅回游を把握するのと同時に、万愛の存在を確かめなければならない。
本当に万愛は今、僕らのいる世界にいないのかを確認して、千愛が万愛だという確証を得たい。
黒い領域の中に取り込まれながら、僕は元の世界へと戻って行く――。
ふいにココアを飲んで微笑む千愛が脳裏に浮かんだ。
僕が彼女に家族の事を質問した時に、兄がいるって自信満々に答えてた顔。