第5章 ★ベッドの上のお手伝い
昨日と同じく全力疾走で駅までの道を駆け抜ける。家を出るのがまたまた遅くなってしまったけど、その事情は前と少しだけ異なる。
五条先生とお喋りしていて、くだらない事で笑っていて、それが結構楽しくて、もう少し彼と話していたいなんて思ってしまった。自分でギリギリにしてしまったのだ。
正面からヒューッと冷たい北風が吹き、私の髪を撫でながら後方へと抜けて行く。髪をひとつに束ねているから、耳に直接風が当たってひんやり冷たい。
今にもキーンとなりそうな、そんな耳の奥の方から、彼が朝、私に告げた言葉が、ふっと浮かび上がってきた。
「僕が千愛に手を出す事は無いから」
「絶対にない?」
「ないね」
五条先生のその言葉が少しだけ寂しい事のように感じた。