第3章 黄色天国
『桃城くんねぇ……少し苦手かも。何だか土足で踏み荒らされそう』
『何をだ』
『色々と、ね』
そう言っていたのは今からほんの数ヵ月前。自身が知らぬ間に何があったのか、何で五十嵐は態度を改めたのか、そもそも井田とは誰なのか、聞きたいことが山程積もって、何から聞けばいいのか海堂はわからなくなってしまった。
「まぁ、それを良しとするならいいと思うが……」
「海堂ならそう言ってくれると思ってた」
どうでもいいと言っていた生徒会選挙の作戦会議は――まぁ、しない方が本人としては良かったのだろうか。
「けどお前」
「5限始めるぞ~」
見計らったかのように教室に入ってくる教師は、今日だけはどうにも気が急いていたようだ。予鈴はまだ鳴っていないというのに。
結局、本心を聞こうにもタイミングに恵まれず、海堂の心にはほんのりともやが残ったのであった。