第2章 あなたは一体誰なんですか
男が無駄に身長のある体を窮屈そうに屈め、部屋に入ってくる。
ベッドのふちに腰かけ、目の下まで毛布をかぶる私を、それはそれは楽しそうに見下ろす。
「…ここはどこなんですか」
「バハッ♡ンな辛気臭ぇ顔すんなって」
口角を歪ませ、無理やり毛布を剥ぎ取り、顎をすくって顔を近づけてくる。
きも…。手を振り払い、そっぽを向いてやる。
「さわんないでよ、ここどこなんですか?てか、誰なんだよですか?」
「さぁなァ?どこだろーな♡」
答えろや。日本語おかしなったわ。てかこいつ…なんか、変。いやこんなことしてる時点でまともじゃないことはわかるんだけど…。明らかに堅気じゃないよね????
え、待って待って無理無理。まさか消される?闇取引見ちゃったっけ???あの某探偵アニメに出てくる黒の組織なの?そうなの?私まだやりたいこといっぱいあるんだけど。録画した恋愛ドラマ見てないし、ペットも飼ってないし、まだローソンの新作スイーツ食べてないし…。まともな恋愛もできてないのに!!殺されるのか、殺されてしまうのか????うそだろおい誰か嘘だと言ってくれ。私のことを抱きしめて大丈夫だよって優しく耳元で囁いてぇぇぇぇ!!!!!!
「楽しそーだなァ。俺のこと忘れてね?」
え?
「安心しろ、殺さねぇよ。ドラマぐらい見せてやるし、動物なんか連れてきてやるし、菓子でもなんでも買ってやるよ」
マジ?
「マジ。」
心が読めるんですか????
「全部口に出てるけどな」
「出てないよ」
「あっ」
私アホかも。
知ってたけど…
「バハッ♡やっぱ面白れぇーなァ。死にたくなけりゃ帰ってくるまで大人しくしとけよー♡」
男はやっぱり楽しそうに笑うと立ち上がり、硬直した私の頬にちゅ、と口づけて玄関に消えていった。
え、ていうか、ちゅ、て、え、ちゅ、て…
顔よく見てなかったけどあの人、実はめちゃくちゃイケメンなのでは…?鼻筋通ってるし、あごの形も綺麗だし、眼鏡めちゃくちゃにあってるインテリ系…?だったし。。。