第5章 風が変わる
仕事の整理も終わると 私は途端に暇をもて余した
イザベルのラストネームはマグノリアで木蓮の花の名前でもある
春になると木蓮が咲き 木蓮の花が散ると次は桜が咲くんだよね
暇だし久しぶりに立体折り紙でも作ろうかな…木蓮の折り方は載ってなかったけど睡蓮ならあったはずだ
この世界の文字で書き写した折り方をみながら睡蓮を折る
繕い物や刺繍の仕事が忙しくて何年も折り紙を作って無かったから 文字だけでは分からない所がある
玄関の扉の鍵は閉めた…ダイニングテーブルの下に潜りナイフで床のタイルを剥がす
ここに私の秘密が入っている 立体折り紙の本を取り出し睡蓮のページとにらめっこしながら折り込んでいく
リースにしてイザベルの寝室のドアに飾ろう
可愛い睡蓮を色違いで何個も作りながら夕食の準備もしていく
ジャガイモのポタージュ トマトとセロリのマリネ 甘くないキャロットケーキにポーチドエッグを添える
いつ帰ってきてもいいようにポタージュは冷製にした
夕食の準備も終わり 睡蓮のリースを仕上げていく 色のバランスも考えながら集中して作業をしていると 玄関の扉がノックされた
知らないリズムだ…返事もせずにリースへと目を落とすと
「カナコ!」
リヴァイの声と同時に扉が蹴破られた
声も出せず驚き振り向くと金髪で背が高く鼻の下に髭をはやした憲兵の制服を着た男が家の中に入ってきた
咄嗟にテーブルに置いたままの折り紙の本を後ろ手に隠し外したままのタイルの上に座り込んだ
どうして憲兵が?この本を見られたらどうなるの?リヴァイは?
男はそのまま真っ直ぐに私の前に座ると顔を近づけ スン と鼻を鳴らした
怖い…顔を上げる事が出来ない 男の履いているブーツを見ていたら
髪の毛を掴まれ強引に顔を上げさせられる 男の大きな手と強い力で赤毛のウィッグがずれて そのまま剥ぎとられた
「くっ…!」
今度は地毛を掴まれ痛みで声がもれる
「この髭野郎!カナコを乱暴に扱うんじゃねぇよ!殺すぞ!」
イザベルの声がする方に顔を向けると3人が後ろ手に縛られ拘束されている姿が目に入った