第1章 血海×秘宝
とある大陸の小さな集落はわざわざハンターしか踏み入れてはいけない大地ででき、他の民族と関わる事も、一般人に合うこともない。知るものはごく少数の金持ちか、ハンターだけだった。「コシュカ」と彼らは自分たちを名乗り「秘宝の門番」として凶暴な魔獣と共にハンターの前に立ちはだかり腕を試すのだとかいう。負けを認めた暁には、コシュカ族は自身の血液から深紅の宝石を出し、目からは花びらの形をしたこの世のものとは思えぬ美しい鉱石を出し差し出すという。その幻の鉱石は富豪たちの間では口から手が出る程欲しい品物だ、ただし花びらの鉱石はどんな方法で入手されるのか未だに知るのはコシュカ族だけだという。
そんな謎に秘められたコシュカ族の娘が私である。腕利きのハンターや盗賊から秘宝を守る強いコシュカになるために日々、15人の子供達は今日も日が落ちるまで修行をする。毎日、コシュカの魔獣から課題が出され、魔獣の毒が入ったエキスを飲み成長していく。
そうして、魔獣とコシュカの長で、次代の秘宝の守り手を決めるため5人がラグジス山と呼ばれる世界でも指折りの危険地域に投げ出され、14、15歳になるまで修行することが命じられる。
年齢は子供の少なさからばらばらではあるが、強い10歳程度の年長者が選ばれることが多かった。今日はその5人が選ばれる大切な洗礼の日だった。
「ちょいと、坊や達、頼むからととさんの毒をお飲みや」
コシュカの人間である母が私と兄に魔獣の父親のエキスをこれでもかと進めるが私達は口をとがらせ、頑なにそれを嫌がった。
「父さんの、じかのエキスなんて気持ち悪い」
あにぃが私の気持ちを代弁するように口を開いた。私はうんうんと力強く頷いて見せると、母はプツンと切れたようにキイキイ怒鳴り始めた。
「仕方ないでしょが!!ととさんが魔族で一番強くて、一番多い毒素をもってるんよ!立派なコシュカになるには少しくらい我慢し!」
甲高い声に私は慌ててととさんの毒を飲み干した。毎日のように飲んでいるからもう悪寒がする程度の症状しか出ない。あにぃは冷めたようなまなざしでととさんの濁った気味悪い毒を眺めたまんまだった。