第1章 始まりの合図
次々と破壊されていく壁、巨人によって多数の兵士が命を奪われた。
決して、その死を無駄にさせない・・もうこれ以上何も奪 かわれたくない。
人類の勝利、その為に戦っている。
リウカペルは第104期訓練生の1人。
訓練生の中でもそんなに目立つ存在でもない、ずば抜けて戦闘力が有るわけでもないし座学があるわけでもない。
一ヶ月後に控えた壁外調査の為、立体機動訓練に励んでいた。
「リウ っ!」
立体機動の不調のせいか、今まで順調に飛んでいたのに
バランスを崩してしまった。
「おい!大丈夫か?」
倒れそうになった体を支えてくれたのは、ジャンだった。
「ジ、ジャン・・ありがとう」
「どうした?無茶すんなよ」
「途中でおかしくなっちやって」
「あ?見してみろ!」
ジャンはリウの装置を触る。
「ここか!?これで大丈夫だ。もし壁外調査だったら
喰われたぞ」
「そうだね・・本当にありがとう」
ジャンの言う通りだ。
これが実戦じゃなくて心底良かった・・安堵していた時
リウの唇にジャンの唇が触れた。
「俺はもう誰も失いたくない・・誰かが死ぬのはまっぴらごめんだ・・.リウ・・お前もだ」
いつもの綺麗な茶色い髪、切れ長の目。
しばらく二人はそのままだった。
「俺は先に行く・・リウは俺が守る」
ジャンは颯爽に飛んでいく。
「ジャンっ!」
リウが名前を呼んだ時には、もう視界にはいなかった。