第29章 煉獄様の誕生祝い
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それから一ヶ月間、杏寿郎は手を退かされてもめげず、積極的にスキンシップを取ろうとし、褒め言葉を贈り、圭太と決めた事を忠実に実行した。
又、蓮華から得た情報を参考に青い花の飾りが付いた簪や、趣味だったという箏まで贈った。
贈り物については流石に菫も弱った顔をした。
明らかにただの部下への褒美には相応しくなく、そして高価だったからだ。
「あの…、」
菫は簪を手に眉尻を下げた。
その反応を見た杏寿郎も眉尻を下げる。
杏「気に入らなかっただろうか。君が好みそうだと思ったのだが。」
そう言われて改めて簪に目を遣る。
確かにそれはおかしいくらいに菫の好みであった。
「…いえ、とても好ましいです。ですが、」
杏「それなら貰ってくれ!俺は簪を付けないので君が貰ってくれないとそれは捨てなくてはならなくなる!」
菫は杏寿郎を見つめた後、再び簪へ視線を落とした。
「…分かりました。ありがとうございます。」
杏寿郎は全く喜ばれなかった事に気落ちしたが、菫は杏寿郎が寝ている間、着物姿で街へ行く際にそれを付けるようになった。