第27章 告げる
「…あの……わ、私…、」
杏「少なくとも俺の為にはならない。勝手に決めないでくれ。」
杏寿郎が目の前に立つ。
菫は視線を落として杏寿郎の足元を見つめた。
杏「……菫さん。」
杏寿郎が聞き慣れない呼び名を使う。
杏「俺の目を見てくれ。」
菫は少し固まった後、なんとか杏寿郎の瞳を見上げた。
しかしどうしてもすぐに逸してしまう。
杏「頼む。」
そう言われると菫は少し泣きそうな顔をしながら再び視線を戻した。
赤い瞳と視線が絡み合う。
見れば分かる。
杏寿郎の瞳はある情熱に燃えていた。
杏「俺は、」
「お待ち下さいませ…。」
杏寿郎は言葉を被せられ、更に再び視線を外されるともどかしそうに眉を寄せた。
杏「こちらを見て、話を聞いてくれ。」
意志の強い声を聞くと、菫は再び恐る恐る視線を戻した。
その臆病な瞳に杏寿郎の手も汗ばむ。
杏「もう、分かっているのだろう。俺は君に恋慕の情を抱いている。一人の女性として見ていて、慕っている。」
いざはっきりと言葉にされると、その可能性をずっと見ないようにしてきた菫は固まってしまった。
「…ですが、」
杏「ですがも何も無い。俺は君が好きなんだ。間違いなく、君が好きだ。」
その言葉に菫は口を閉じた。
杏寿郎の気持ちが本物であると認めざるを得なかったのだ。