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【明日方舟】すれ違い×一目惚れ 【ジェイ】

第2章 少し近づく


 あの日助けた彼女はロドスで働くことになった。適正はなかったからオペレーターには慣れなかったらしく、裏方の簡単な雑務を請け負っている。今も食堂で皿を引き上げたりテーブルを拭いたりしている。
「おーい、クロー! こっちに酒追加ー!」
「は、はい! ただいま!!」
 彼女――クロは、キアーベさんに注文を受けて奥へと小走りに向かっていった。
「…………。」
 クロには記憶がなかった。自分のことも、周りのことも何も覚えてなかった。ケルシーさん他医療オペレーターが調べたが「記憶は戻るかもしれないし、戻らないかもしれない」とのことだった。まぁ、この悲惨な大地では珍しいことじゃない。現に記憶のないオペレーターは他にもいる。クオーラさんとかもそうだったはずだ。……それでも可哀想だと思ってしまうのは俺のエゴだろうか。
 名前のない彼女は「クロ」と名付けられた。安直な名前だなとは思ったが彼女は気にしていないようで今も名前を呼ばれて右に左に走り回っている。
「(……怖がられたよな)」
 無意識にため息が零れる。さっきからたまに視線が合うが、すぐに目をそらされてしまう。昔からよくあることで気にすることでもないが、自分が助けた……少し気になる少女に怖がられるっていうのは思った以上に堪えるらしい。それでも彼女を目で追うことを止めることが出来ねぇってんだから始末に負えねぇな。
「(真面目に仕事するか……)」
 頭を振り、目の前のことに集中する。考えても仕方がない。機会があれば怖がらせたことを謝ろう。それで関係が改善されるとは思わねぇけど、やらないよりはマシだろう。
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