第38章 追憶*
side.五条悟
情事後。
見つめ合うように、ベッドに横たわる。
「…左目…戻らなかったね」
「いいんだ。左目を代償に封印が解けたのなら。僕はそれでいいよ」
「………」
そんな悲しそうな顔しないでよ。
あの特級呪物の獄門疆から、出てこれただけで。
凄いことなんだから。
「これを機に専業主夫にでもなろうかな?」
「いいよ。私が養ってあげる」
「名前は理想の妻だね」
きっと君は、僕が両目を失ったとしても。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれただろ?
僕はそんな君に甘えて余生を過ごすのも悪くないって思ってしまう。
「ねえ?前に夢の話をしたよね?」
「五条家の跡継ぎが見つかったら、隠居するって話?」
「うん。僕はあの時。君と海の見える所でゆっくり過ごしたいと思ったんだ」
「そうなの?」
「うん」
これを機に、第一線を退くのもいいんじゃないかな?
幸い僕の生徒たちは、みんな優秀だ。
「来年の今頃はタイの山奥で、天の川を家族で見たいな」
「そういえば、蓮も心も桃が好きだって知ってた?」
「あー。心に強請られたよ」
「桃狩りにも連れて行ってあげたいな」
そうだね。
僕達の未来は夢で輝いてる。
この先の人生は、家族と過ごすことだけを考えていたい。