第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
赤葦と一緒に出て行ったきりのがなかなか戻ってこない。内心気が気じゃなくてチラチラと出入口を確認してしまう。
「おい黒尾!よそ見すんな!」
「へーい」
「てかあれ、ちゃんは?」
「なら梟谷のセッターと出ていくとこ見たけど?」
「ふーん、告白?」
やっくん気づくの遅すぎ。うちの可愛いマネ連れてかれてるんですよ?海が気づいてるのは視野が広いというかさすがというか。
「ヘイヘイ黒尾!赤葦知らねえ?」
「赤葦くんならうちの可愛いマネ連れて消えました〜」
ちょっと涼んでくると外に出たきり戻らない赤葦を探していたらしい木兎。「赤葦やるな〜」なんて言って、いないならいいわ!と俺たち音駒の輪に混ざった。まさにコミュ力おばけ。
しばらくして戻ってきたは梟谷のジャージを羽織っていた。たぶん絶対赤葦の。
「ちょいちょいなにそれ、なんで梟谷の着てんですかぁ?」
『食堂の空調が思ったより効いてて赤葦くんが貸してくれたの』
「音駒のマネなんだから音駒ジャージを着なさいよ」
『バッグに入ったままだもん。』
「じゃ俺の貸すからそれ返してきなさい」
『なんでよせっかく貸してもらったんだからいいってばぁ』
「ダメです、お前はうちの子なので」
ぷくーっと頬を膨らませた彼女から梟谷のジャージを剥いで自分の真っ赤なジャージを着せる。
「いいじゃねえか黒尾のケチ〜!梟谷のジャージも似合ってたぞ!お前可愛いから何でも似合う!」
ニカッと笑っての頭を撫でる木兎。さらっとそういうことを言えてしまうコイツが羨ましい。俺も付き合ってる時は息をするように言ってたんだけどな。
「そういや赤葦は?」
『赤葦くんならお風呂はいって寝るって言ってたよ?』
「まじ?んじゃ俺もそろそろ戻るかー。ジャージ赤葦に返しとくよ!」
『そんなの悪いし自分で返すよ!』
「いいって!じゃあまた明日な!」
の手から白いジャージを奪って体育館を出ていく騒がしいやつ。
『木兎くんて嵐みたいな人だよね…』
「そうね、これこそが木兎だよね」