第10章 約束 ( 北信介 )
「さんこの前のオフ侑くんとおりました?」
部活終わりの部室。
女の子が集まれば恋バナは日常茶飯事。
『あーうん、おったよ』
「やっぱり!超お似合いでした!美男美女ってこの人たちのこと言うんやなって思いましたもん!」
『ほんとに少し出かけただけやで』
「クラスの子も言っとりましたよ。
相手がさんなら勝ち目あらへんって」
『勝ち目て…宮くんと付き合うとらんよ』
「またまた〜」
ナイスペアです!とテニス部らしくペア呼びをしてお疲れ様です、と部室を出ていった後輩。
「ほんまは?」
3年生だけが残る部室で目をキラキラさせながら聞いてくる。
『ほんまに付き合うとらんで。』
「でも告白されて振ったんやろ?」
『そうやけどいろいろあんねん。』
「いろいろね〜?
デートしておとされて帰ってきたん?」
『おちてへんわ』
「ふーん。せやけど外から聞こえてくる声宮くんちゃう?」
『…えっ』
部室の窓をあけると下におったんはまさに宮くんやった。
「さーーんっ!」
『…何してんねん』
「え!一緒に帰る約束しましたやん!」
あ、あ…そうやった。毎日送る言うてたんやったわ。信介くんとのこと話せんままこの時間になってもうた。見渡す限り信介くんおらへんし先に帰った?いやでもまだおるやんな…どないしよ。
「さん帰ろ!!」
『あー…うん、今行く』
今日で最後や。ちゃんと話さんと。
「宮くんも健気やな。
大型犬に見えてきよったわ。」
『最近しっぽ見えんねん』
窓を閉めると部員が口を開く。
「はよ行ったり〜」
『あ、うん。またね』
宮くん待たせてんで、と帰りを急かされ荷物を持って部室をでた。
「さんお疲れ様です!」
『宮くんもお疲れ様』
「…北さんならまだ体育館おりますよ」
『え?』
「いや、そわそわしとったから…北さん探してるんかなーと思って。すんません。」
無意識に信介くんのこと探しとった。
帰ればすぐ会える距離やのにな。
『あのね宮くん話さんといけんことあんねん』
「あ…まって。聞きたくない、です。」