第13章 吸血鬼に激しく奪われて…(杏寿郎の場合)
その言葉に反応し
一歩、また一歩と近付いてしまう
「…吸血鬼は、ある程度の飢餓状態になると特殊な声色になり人間はその命令に抗えなくなると聞く」
炎の瞳に魅入られ、その声色に耳を傾けると
どんどん身体が言う事を聞かなくなる
自分の意志で動けない恐怖に涙目になるみずきを見て
「…俺が怖いか?」
少し寂し気に問われ
思わず胸が締め付けられたような気がした
『怖く…ないと言ったら、嘘になりますが…炎柱様をお助け…したい気持ちにっ…嘘は、ありません…』
時々、強張りながらも紡がれた言葉に
温かさを感じ、飢餓感が少し薄れた気がした
「ふむ…情けないな。君にそうまで言わせて、臆している自分が!」
両頬を思い切りバシッと叩くと
「…すまぬが、少しで良い。君の血を分けてくれ」
痛い思いはさせないと、安心する声で優しく言われ
みずきはホッとしながら
『承知しました、どこから吸われますか?』
「…出来れば暴走は避けたい。首以外から貰おう」
『でしたら、手首になさいますか?』
色白な腕を差し出され
どうぞと、愛らしい声を合図に
その手を掴み、牙を立てる
プツッと控えめな音がしたが
あまり痛みは感じない
…仰った通り、優しくして下さっている
本当は苦しくて仕方ないはずなのに
ジュルリと吸われる音が響く頃に
何故か、身体に違和感を感じ始めた
痛くないし、優しくされてるはずなのに
何だか噛まれてるところが熱い
吸われる度に身体がビクリと反応してしまう
ついには
『……んっ…はぁ…はっ…あぁぁっ…!』
甘い声が漏れてしまった
『…大変、失礼…致しまし、た…っ』
何とか耐えようと唇を噛む
「……言い忘れていたが、吸血鬼に血を吸われると人間は牙から注入される成分で痛みは和らぐが同時に快楽物質が大量に出る」
つまり、と腕を舐め上げながら続ける
「…神凪のその反応は決して不思議な事ではない」
欲の色が宿る瞳で見られ
ドキリと心音が早まると
「…ふむ、君が感じると血が甘くなるようだ」
分析されながら、舐めたり吸われたりと
色々と試されてるうちに
気が狂いそうな程の快楽で思考を支配されそうになり
『…も、もう…傷は治りました、から…やめ…て』