第1章 推しが3次元で目の前にいたら、
いわゆる神様転生をした。
まさか本当にある(しかも当事者になる)とは思わなかったけど、真面目に生きてきて良かった、くらいに留めておこう。油断禁物、日々精進!
それよりも目の前に立ち塞がる″壁″をどうにかしなくちゃ…
「分からないところ、あった?」
教えてごらん、と優しく促す声に、ハッと顔を上げて、こちらを穏やかに見つめる瞳とかち合う。
その視線に一瞬呆けて、慌てて視線を落とす。
やばい、今の不自然だったかなと焦る気持ちをごまかし、ここです、と夕日に照らされた教科書を指差す。
そよそよと吹き抜ける生ぬるい風にすら、かき消されそうな程か細い声だったけど、聞き取ってくれたようで、ついっと長い指が動き出した。
「これはね、、、」
画面越しに、紙面越しに、恋い焦がれて夢をみて、
会えるわけがないからって言い聞かせて。
いまさら架空のキャラにまじ恋とか勘弁してよって。
そんな、いわば″最推し″が、
同じ3次元で目の前にいたら
自分の意思で動いて話して、
笑顔を向けてくれてたら
(普通に話せるわけないよね!!)
今、″夏油傑″という高い壁が立ち塞がる!!
果たしてこの苦難を乗り越えていけるか…っ?
こんなアホなこと考えてないと私は死ぬ、羞恥で。
「ちゃん、ここまで大丈夫そう?」
「はい!ありがとうございます傑先輩!」
先輩後輩の関係に、お互いの名前呼び
まだ慣れなくて、居酒屋みたいな返事をしてしまった。
元気でいいねぇ、って推しが私で笑ってる…
しんどい