第19章 それぞれの想い
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「その後、僕は潤 くんのマンションで一緒に暮らしてたんだけど、会社が大きくなると色々あってさ…
…潤 くんに一目ぼれした、取引先のお嬢様が“出資金”て名前の持参金持って来て…
…大口の取引先だったし、断りきれなくて……そんで、カタチだけだからって言って…
…潤 くん結婚したんだ」
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窓の外はすっかり日が沈んで、月明かりだけが部屋を照らしていた
暗くなった部屋の明かりを君が付ける
「わっ!…翔くん酷いカオ…」
俺は智くんのソーゼツな半生を聞いて、もう、涙と鼻水で顔がぐちょぐちょ…
「ざ…ざどじぐぅ〜ん///」
「なぁに?」
智くんは何の躊躇もなく、俺のぐちょぐちょの顔をキレイに拭いてくれる
「ざどじぐぅぅ〜〜んっ(泣)////」
「はいはい、泣かないの」
こんなに…
こんなに辛い目に遭ったのに…
君は何でそんなに優しく笑えるの…?
俺の胸は智くんへの愛しさで張り裂けそうだった
俺の顔をすっかりキレイにすると、君は俺の胸に蹲る様に抱きついた
「…僕のコト…嫌いになってない?」
「な、何でそんな事っ!今の話の何処にそんな要素があったの?!」
「…んふふ、翔くん大好き///」
そう言うと、智くんは俺の頬にキスをした
「ありがとう翔くん…
…僕を好きになってくれて…ありがとう…
…僕を……見つけてくれて…」
「俺の方こそ、ありがとう
…俺に出会ってくれて……ありがとう」
俺は、智くんの方に向き直って正座すると、その手を取った
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