第8章 想い人
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「………え?」
僕は、ギクリとした
それ迄の僕は、それが愛を確かめ合う唯一の方法だと思ってた
僕には、それしか無かったから
…だけど
潤くんの顔がゆっくり近づいてくる
(…いやだ…)
「…智」
(…どうしよう…僕…いやだ…)
「…潤く…っ」
潤くんの唇が僕のそれを塞ぐ
彼の手が僕の身体を這う
(…いやだ…触らないで…それ以上は…)
その手がシャツの中に入ってくる
「あっ///」
「…俺の…智…愛してる…」
「…っっいやっ!!////」
何時も快楽しか感じなかった潤くんの愛撫に
どうしてか、背中がザわっと粟立った
僕は、思わず潤くんの手を跳ね除けてしまった
「…智?」
「ごめん…今日は…き、気分じゃないからっ」
僕は、どうしたら良いか解らなくて
怪訝な顔をしている彼から眼を逸らした
「悪いけど、そんな焦らしに乗っかるほど余裕ないんでね」
「違うんだホントに今日は…」
「冗談だろ?」
潤くんがまたニヤリと笑う
「三カ月振りだぜ?」
「!!…潤くん、潤くんいやだったら!!じゅっ…ンッ////」
潤くんが僕の上に跨り唇を奪う
そして僕の自由を…身体を…奪って行く…
(…あぁ…翔くん…!!///)
僕は、潤くんに与えられる快楽に喘ぎながら
頭には、翔くんの事ばかりが浮かんでいた
(…いやだよ…翔くん…感じたくないのに…)
僕の全てを知り尽くした彼の手が、容赦なく僕を攻めたてる
聞きたくない淫らな声が、勝手に口から洩れる
「あぁ…ぃや…や…んんっ////」
「イヤだって?こんなになってるのに?」
「あぁんッ////」
潤くんが僕の欲情の中心を弄る
「あぁッ!…やぁっ…ぃやあぁッ!!///」
(…翔くん!翔くん!////)
潤くんに抱かれながら
ただただ、心の中で貴方の名を呼ぶ僕
(…そうか…僕は…)
全てを彼にいいようにされて尚
ただ貴方だけを想う僕…
(…僕は…翔くんが…翔くんを…)
そうなんだ…解っちゃった…僕…
(…僕は、もう、潤くんを愛していないんだ…
…僕は、翔くんを…)
「………愛してる」
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口に出して、言葉にしたそれは、僕の中でより鮮明なものになった
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