第55章 南方駐屯訓練兵団

「――――――なんだよそれ。俺はお前らが幸せになるならって――――――。」




「…………。」



「いつ死ぬかもわからねぇのに………！好き合ってる奴と離れなきゃなんねぇ意味がわからねぇよ！」



「――――サッシュ、ナナと兵長にしかわからない理由が――――――。」



「――――兵長だから、ナナを諦めたのに―――――……！」



「―――――………！」





その言葉を聞いたリンファの目が見開く。

まさかそんな言葉が出て来ると思わなかった。前は確かに私の事を好きだと言ってくれていたけれど、今はもう、どこからどう見たってサッシュさんはリンファの事を――――――――



「――――もう、寝よう。サッシュは自分の部屋に帰って。」

「まだ、話は――――！」

「帰って！！！」



リンファが声を荒げる。サッシュさんは納得のいかない顔をしたまま、足早に部屋を去った。



「―――――…………。」



なんて言えばいいのだろう。言葉が見当たらない。

ごめんなさいでもなく、ありがとうでもなく、こんな時親友に、なんて言えばいいのか。

私はそんなことすら知らない世間知らずだ。



「―――――本当の理由は………弟の、一件から……なの………？」

「―――――ううん。」



リンファから口を開いてくれたそれに、小さく答える。





「わからない――――……なんで……泣くほど、息もできないほど、兵長のことが好きだって……言ってたのに………。」




「―――――私はきっと、リヴァイさんと一緒にいると、戦うこともやめて……世界なんてどうでもよくなって……リヴァイさんの籠の中で生きる鳥になっちゃう。でも、それじゃダメなの。私にはやらなきゃいけない、明らかにしなきゃいけない事がある。だから私がさよならしたんだ。」