DIABOLIK LOVERS-My blood-
第8章 血雫 8
そう、目の前に居るのは…恐らく、ヴァンパイアだろう。そして、その勘は次に発せられた言葉により、確証へと変わる。
「美味しそうな、
血の匂いっ…………!!!!!」
カナトと呼ばれていた”ソレ”が、目をぎらつかせ、叫ぶ。大方、ユイの膝の傷から流れ出ている血に反応したのだろう。
ゆっくりと近付き、迫り来る恐怖の中で…私は確証どころか証拠まで掴んでしまっていた。
持ち上げられた唇の間からから覗く、八重歯とは言い難い────その”モノ”。
白く鋭利な、「牙」を────……。
ああ、だんだんと距離が無くなっていく…
(……っ!!
吸われるっ…………!!!!!!)
じりじりと私を蝕んでいくそれに私は耐えきれず、俯き…震え…その時をただ無抵抗に待つ事しか出来ずにいた。
だが、ユイは違った。
彼女は教会の、神父の娘。つまり…ヴァンパイアの最も苦手とする物を持っている。
「これでも食らえっ!!」
両手でロザリオを握り締め、私達の頭上に翳す。
「ふっ……………」
それは、聞こえるか聞こえないか分からない位の、小さな嘲笑。だが、それは張り詰めたこの場の空気を一瞬にして元に戻す。
恐るおそる片目だけを開き様子を窺うと、口元にほんの少し笑みを浮かべている、イヤホンの”ソレ”と、瞳から怪しげな光の消えた、5つの”ソレ”ら。
「……全く、本当に
躾がなっていない。」
眼鏡の”ソレ”が静かに呟き、静寂を切り裂いた。