第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
九井は片手をポケットに入れると
自宅の合鍵を取り出した
あれからすぐに昼間の仕事が決まったレイナは
給料に見合った家賃のところへ引っ越すために部屋を探していた
けれど
彼女が予算内で選ぶマンションはどこもセキュリティがガバガバで
安心して住まわせられないような物件ばかりだった
だからと言って
生活費の足しとして九井が金を渡したりしたら
また怒らせるだけだろう
" 一緒に暮らさないか "
九井はその言葉をかけるタイミングをはかって
ずっとレイナに渡すための合鍵をポケットに入れたまま持ち歩いていたのだった
(……今夜、勇気を出して伝えてみよう…)
そう決意した途端、急に足取りが軽くなる
(……早く…オマエに会いたい…)
気が付くと
自然に口元が綻んでいた
" 良かったね、一くん "
そんな声が聞こえたような気がして
九井は立ち止まった
「……」
周りを見渡しても
誰も居ない
(……そう……あの人は、もう居ないんだ……)
現実を受け止めるように
大きく深呼吸する
「………赤音さん……オレ、幸せになっていいのかな…」
掠れた声で呟き
暗い夜空を見上げると
真っ白な雪の粒が落ちてきた
それは
天使のようにフワリと舞って
九井の赤くなった鼻先にキスするようにそっと止まると
静かに
溶けていった…
九井一 夢小説『silent night』end.