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【HP】怪鳥の子

第56章 ホグズミード村


 三人は通りを行ったり来たりしながら、文房具店や箒屋、奇妙な魔法道具を並べた小さな店を覗いて回った。魔法用具店の『ダービッシュ・アンド・バングズ』、いたずら専門店の『ゾンコ』、『三本の箒』、とにかくいろいろなお店があった。

 ロンは新しいいたずら用グッズに目を輝かせ、ハーマイオニーは古書店の棚に並ぶ分厚い本に足を止める。その横で、ミラはショーウィンドウに映るハロウィーン飾りをぼんやりと眺めていた。

 やがて、甘い香りに引き寄せられるように、三人はハニーデュークスの前に立った。扉を開けた瞬間、砂糖とチョコレートとキャラメルが混ざったような、幸福そのものみたいな匂いが押し寄せてくる。

「うわ……!」

 ロンが思わず声を上げる。店内は人でいっぱいで、天井近くまで積み上げられた色とりどりのお菓子が、魔法みたいにきらきらしていた。

「ハリーにはこれがいいと思うわ」

 ハーマイオニーが手に取ったのは、包み紙が星模様のチョコレート。ミラも頷きながら、棚を見回した。

「それなら、蛙チョコも入れよう。カード集めてたよね」
「あと、百味ビーンズも外せないな。変なの当たったら面白いし」

 そう言いながら、ミラは次々と籠にお菓子を入れていった。かぼちゃ味のキャンディ、温かくなるスパイス入りチョコレート、ハロウィーン限定の骸骨型クッキー。

 ――ここに、ハリーがいたら。

 ふと、その考えが胸をよぎった。棚の前で目を輝かせて、どれにしようか迷いながらも遠慮して、「みんなで分ければいいよ」なんて言うハリーの姿が、ありありと浮かぶ。

 きっと今頃、これを見たら笑っただろう。
 これを食べたら、変な顔をしただろう。

 ミラは、手に取ったお菓子をそっと籠に入れながら、胸の奥が少しだけきゅっと痛むのを感じた。

「……本当は、ここにハリーがいたら絶対楽しかったのに」

 小さく呟くと、ハーマイオニーが何も言わずに頷き、ロンも少しだけ口を結んだ。

「だからさ、たくさん買って帰ろう」
「うん。持ちきれないくらいね」

 三人は顔を見合わせて、もう一度棚に向き直った。
 ここにいない一人のために、できるだけの楽しさを詰め込むように。
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