第4章 【第三講 後半】そして棒倒し……
全校生徒、全保護者、全教員が凍りついた。
元からこの大乱闘で凍りついていたのだが、さらに別の要因が働いて凍りついた。
やがて、一斉に走り出す。
「キャアアア!!」
「ウワァァァ!!」
逃げ惑う人々。
たかがヤンキー同士の抗争で、こんなパニック映画のような事態は引き起こされない。
人々を恐怖の渦へと巻きこんでいる原因は、高杉にも、神威にもない。
「何よ、アレー!!」
○○も思わず声を荒げる程の非常事態。
ハタ校長が、暴れていた。正確には、ハタ校長が作らせたMVPの賞品、全長十メートルはあろうかという、ハタ校長を象った巨大なロボット。
それが突然動き出し、人々を踏み潰さんとしている。
「勘弁してくれよな」
「銀八先生!」
銀八ら教師陣、さらには土方と高杉、神威までもが集結する。
最早、棒倒しどころでも、体育祭どころでも、乱闘どころでもない。
止める方法を口々に出し合う中、さっさと避難しようと銀八は言う。
「ちょっと、離して下さい」
銀八は○○の二の腕を掴んでいた。
「一緒に逃げんだよ。俺と○○の逃避行だよ」
「逃避行って、意味が違ってきますけど」
逃避はしても、銀八と共に逃避行をする気はさらさらない。
○○は銀八の腕を振り払う。
「待ちな。逃避も逃避行もさせやしないよ」
○○と銀八は声の方に目を向ける。そこに立っていたのは理事長、お登勢。