第11章 【第七講 後半】酸いも甘いも苦いも辛いも青春の一ページ
「○○殿、土産にこれなんかはどうだろう?」
「いらない」
横からの声に、○○は目もくれずに答える。
「では、こっちはどうだろう」
「それもいらない」
「これなんかいいんじゃないか?」
「桂くんのオススメするお土産は全部いらない」
「じゃあ、これなんかよくないんじゃないか?」
「よくないならいらない」
「これならどうだ! よくなくなくなくなくなくない?」
「どっちだよ」
通る道々、全ての土産屋から桂は○○へオススメをする。
「テメェはしつけーんだよ! 黙って歩け!!」
キレた土方が声を荒げる。
「せっかくの京都だぞ。土産を買わない手はないだろう」
「だから、後でいいんだよ、そんなもんは!! 拝観が先だろうが!!」
寺の拝観時間は短いため、先へと進みたい土方だが、桂がいちいち邪魔をする。
「配管? マ●オ殿のことか?」
「配管じゃねェ! 拝観だ!!」
こめかみに青筋を浮かべる土方、涼しい顔で受け流す桂。
○○は背後の喧騒など気にも留めずにズンズンと進み、近藤の隣を歩く沖田も飄々たるもの。
修学旅行二日目の今日。
午前中はクラス単位での京都観光、午後は事前に決めた班での行動となっている。
捻った足もすっかり癒えた○○は、京都の町を元気に歩いている。
「やっぱり、このメンバーは無理があるだろう」
近藤は溜め息をつく。
班員は○○、近藤、土方、沖田の馴染みの四人と、場違い感が半端ない桂。
元々は桂ではなく山崎だったが、○○と同じ班になりたい桂は山崎とのジャンケン勝負に勝ち、この座を勝ち取った。