第193章 秋晴れ⦅五条⦆
雲ひとつない晴れ渡った青空。
木々は赤や黄色に色づき、季節の移り変わりを感じる。
ベンチに腰かけ、親指と人差し指で丸を作って空を覗いた。
「な~に やってんの? なな ?」
そこには青空ではなく、いつものように黒い目隠しをした愛おしい人の顔があった。
『キレイな空だなぁ、って思って見てたの』
自分の隣に座る五条に視線を移し、言葉を続けた。
『でも、空の青より悟の眼の蒼(あお)の方が好き』
照れながらそう言う なな の頭を五条の大きな手が撫でる。
「なな って素直だよね」
わしゃわしゃ と頭を撫でる五条の手を掴みながら、なな は『それって褒めてるの?』と頬を膨らませた。
「なな はずっと素直なままで居てね」
『悟がちゃんと愛情を注いでくれれば素直だよ』
ふふ、と笑う なな 。
秋晴れの暖かさの中、穏やかに笑い合う2人。
晴れていても少しだけ肌寒い秋の空。
自然と肩を寄せ合い、手を繋ぐ。
こんな穏やかな時間がいつまでも続けばいいな、と思いながら なな は再び空を見上げた。
***おわり***