第175章 貴方のすべてが大好きで⦅虎杖ver⦆
貴方の第一印象は【春みたいな人】だった。
さくら色の髪に、人懐っこい笑顔に目が離せなくなった。
気がつくと いつの間にか視線は貴方を追っていた。
無邪気に笑う その笑顔が好き。
授業中に たまに居眠りしている寝顔。
他人の事なのに自分の事のように本気で怒れる優しい人。
コロコロ変わる表情は、見ているこっちも引き付けられた。
だけど、貴方は あの日を境に表情が硬くなったー。
☆ ☆ ☆
「俺はもう、俺を許せない」
消えそうな声で、貴方は俯いて言った。
初めて見た…。
泣き顔。
悔しさで押し潰されそうな表情の貴方に、私は何て声をかけたら良かった…?
私はただ、静かに貴方を抱き締めるしかできなかった。
それなのに貴方は私に言った。
「… なな 、………釘崎が…
……俺が居たのに…、………ゴメン…」
私は野薔薇と仲が良かったから。
私は何も言えずに貴方を抱き締めた。
貴方は【ゴメン】と何度も呟いていた。呪文のように。
呪霊との戦争といっても過言ではないほどの激しい戦いは終わったが、貴方は私たちの前から姿を消した。
再び高専に戻ってきてくれた時。
貴方の顔から【笑顔】は消えていた。
春のような人懐っこい あの笑顔。
怒った顔。
悩んでいる顔。
ー 泣いている顔。
どんな貴方の表情(かお)も好き。
でも一番好きなのは あの笑顔。
一緒に取り戻そ?
いつか自然に笑える その日まで。
*おわり*