第80章 愛情表現⦅宿儺ver⦆
愛情表現は人それぞれだと思う。
犬は尻尾を振り、猫は体を擦り付ける。
宿儺は酒を呑みながら なな にもたれかかってきたかと思えば、その首筋に頭を うずめた。
『ッ痛』
宿儺は酔うと なな を咬むのだ。
咬んだ本人は その事を覚えていない事がほとんどだ。
咬んだ跡を舐めてみたり、吸ってみたり。
そんな行動も宿儺の愛情表現だと思い、なな は宿儺を布団に促した。
『宿儺さま、風邪をひきますよ。
布団に行きましょう』
翌日、なな の首筋を見た宿儺は「またやったか?」と聞いた。
『えぇ、まぁ』
宿儺の問いに そう答えると、抱き締められた。
宿「悪い…、傷つけたいワケではないのだが酔うと何故だか歯止めが効かなくなってしまう」
ちゅ…、と咬まれて うっ血している場所を優しく口づける。
『私は何処にも行きません。
ずっと宿儺さまの傍にいます』
自分を抱き締める宿儺の腕に、 なな は そっと手を添えた。
見れば痛々しい ただの傷。
だが、それをつけた当人の想いが形となって表れた愛情表現なのかもしれない。
*おわり*