第74章 散歩⦅宿儺⦆
紅葉が進むなか、イチョウの葉がキレイに色づき始めた。
『宿儺さま、見てください。
キレイな黄色ですね』
真っ直ぐ空へ向かって伸びるイチョウの木を指差しながら、なな は宿儺の隣を歩いた。
宿「上ばかり向いていると転ぶぞ」
晩秋の貴重な晴れ間。
なな と宿儺は散歩に出掛けていた。
宿儺は なな の歩幅に合わせるように、少しだけゆっくり歩いて景色を眺めた。
『大丈夫です』
よ、と言おうとして なな はバランスを崩した。
とっさに宿儺が支えてくれた おかげで転ばずにすんだ なな 。
宿「ほらみろ、言わんこっちゃない」
鍛えているワケでも無いのに無駄な肉の無い筋肉質な腕に支えられ、なな は『ありがとうございます』と頬を染めた。
宿「なな は細いな。
簡単に折れてしまいそうだ」
なな を支えた腕を、自分の体に引き寄せ、宿儺は ぎゅ っと なな の体を抱き締めた。
『宿儺さまの力が強すぎるのです///』
なな の顔を自分に向けた宿儺は、ケヒと笑い そのまま触れるだけのキスをした。
そして、満足したのか なな を解放した。
宿「何かに躓いたのか?」
まだ真っ赤な顔をしている なな だったが、『足元に何か…』と言って地面を見た。
『あ、宿儺さま 銀杏』
なな がバランスを崩した辺りには殻が潰れた銀杏があった。
『宿儺さま、銀杏を少し拾って茶碗蒸しでも作りましょう』
宿「良いな、茶碗蒸し。楽しみだ」
宿儺は優しく笑った。
***おわり***