第1章 あなただけの⦅宿儺⦆
なな side
時は平安。
呪術全盛期と呼ばれ、呪いが世を支配していた。
平民に生まれた私は、普通に輿入れ(結婚)して、普通に子どもを授かると思っていた。
ひとりの男性と出逢うまではー…
«あなただけの»
母「なな、あまり遠くに行ってはダメですよ」
心配性な母が そう私に声をかける。
「はーい」と片手を挙げて、私は秘密の場所へ向かった。
村「お、なな どこに行くんだ?」
村の人が声をかけるが「秘密ー」と言って はぐらかす。
村「遅くなる前に帰ってこいよー」
村の人もみんな優しい。
自分の家族のように気にかけてくれる。
私はいつものように森の中の湖へ向かった。
『今日も遊びに来たよ』
そう独り言を言うと、小鳥や野生の動物が近寄ってくる。
ここは静かで好き。
特に何をするでもなく、1日を過ごして帰る。
それが私の日課だった。
その日も いつものように村へ帰ると、村の人たちが何やら話し込んでいる。
『どうしたんですか?』
村の人へ話しかけると、「都で呪術戦争が広がっているようだ」と教えてくれた。
村「ここは都から だいぶ離れているから大丈夫だとは思うが…」
村「なな、あまり1人にならん方がいい」