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~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第19章 坂田銀時《ずっと二人で月が見たい》


 再び姿を見せた満月が、互いの顔を明るみに出す。

「顔、真っ赤じゃねーか」

 ○○は目をしばたたかせる。
 自分の顔が赤く染まっていることは、銀時に指摘されるまでもなくわかっている。

「銀さんも赤いよ」

 だが、目の前の顔も赤く染まっている理由は何なのか。
 ○○にはわからない。

「言っただろ」

 ○○の頬に触れ、銀時は顔を近づけた。

「酔ってんだよ」

 月明かりで描かれた二つの影が一つに重なる。

「銀さん、甘い」

 差し入れた月見団子の味。
 ○○の分も残さずに、銀時は全て平らげていた。

「○○は酒の味がすんな。ほとんど飲んでねーだろ」

 銀時は手の甲で○○の頬を撫でる。

「お店でも飲んでるよ。セクハラじいさん達のおごりで」

 クスクスと笑うと、むんずと頬を摘ままれた。

「今すぐ店やめろ」
「そんなすぐにはやめられないよ」

 頬を摘まむ銀時の手に、○○は自らの手を乗せた。
 離された銀時の手をそのまま握り締める。

「銀さんがお店に通ってくれたら、他のお客さんは近づいて来ないよ」
「なんでババアんとこに金落とさなきゃなんねーんだ」
「家賃も払ってないのにお店に通ったら、お登勢さんが怒りそうだね」

 眉間に皺を寄せる銀時の顔が薄暗くなる。
 夜空に目を向けると、再び月が雲に覆われていた。
 銀時は○○の体を抱き寄せた。

「○○に危害を加える奴からも、○○に手ェ出す酔っ払いからも、俺が必ず護ってやる」

 耳元に落とされる銀時の言葉は、去年と同じくらい心強い。

「銀さん、来年もここからこの空、見ようね」

 銀時の胸にもたれ、○○は顔を綻ばせる。

「来年も再来年も、その先もずっとな」

 混ざり合う二人の酒の香を乗せ、秋の夜風が吹き過ぎる。

(了)
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