第7章 「どうした、こんな場所で」
珍しく連休になった私はのんびりと羽休みさせてもらっていた。
冨岡さんはというと、柱という立場にあるのですでに仕事に出ていた。
私も手伝うことがあればと思って冨岡さんに同行を志願したけど、休める時は休めておけと言われてしまった。
どうやら今回の冨岡さんの仕事は担当地区の見回りらしく、何か不穏な動きがあるまでは待機と。
師範の役に立ちたいのに、こうして置いていかれると足手まといに思われてるんじゃないかと不安になる。
階級が“甲”とはいえ、柱との実力差は歴然である。
(大丈夫かな…冨岡さん)
休みを一日挟んだとはいえ多忙な日々。
加えて私の稽古もしてくれている。
柱とはいっても生身の人間なのだ。
疲労も溜まるだろう。
それでも鬼が出たとなれば動き、後輩が危険にさらされれば一番に駆り出されていた。
いつか倒れてしまわないかと、今の気持ちはまるで子を思う母親のようや心境だった。
私は柱の中でも冨岡さんが最強だと思っている。
師範だし贔屓目にみてるところもあるけど。
柱の中でも一番多く共に時間を過ごした人だから、その腕には強い信頼と信用があった。
冨岡さんがいれば私も安心して刀をふるうことができた。
それは常に冨岡さんに守られているような、そんな風にも感じとれたからなのかもしれない。
きっと冨岡さんが守りたいのはみんなで私だけじゃないんだろうけど。
たまに自分でも危ないと思った瞬間には、もう目の前には師範の背中が見えていて。
私はそれがとても心強かった。
(だから、なかなか一人立ちできないんだろうけど……)
たまに隊を率いることがあれば己の力不足で隊士を負傷させてしまう。
十二鬼月でもなんでもないのにだ。
早く冨岡さんのようになりたい。
冨岡さんのような素敵な剣士に。
みんなが、私の背中を見て安心してもらえるような立派な隊士に。