第58章 特別編①
こんなにもネガティブになってしまうのは、悟に嫌われたくなくて、悟がいないとどう生きていいか分からないから。
「…悟のこと大好きなの、伝わってる?」
「そりゃあ…」
「じゃあいいや」
何でも1番がいい、なんて、いつからこんなにワガママになったのだろうか。
どんどん、どんどん、欲しがりになっていく自分が怖い。
「いいの?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「……千夏って本当によく分からないタイミングで気持ちにケリつけるよね」
「そうかも」
お互いこんな性格だから、めっちゃイラつく時もある。
というか、付き合ってから「好き」という気持ちで抹消できないほどの不満が生まれている。
でも、それは爆発させるだけでなく、
「なーにニヤニヤしてんの」
「んーん」
一緒にいられる幸せがかき消してくれるから。
「リンゴ食べる?」
「食べる」
「ちょっと待っててね」
「僕もやるよ」
不満は不満。
それ以上でもそれ以下でもない。
不満が諦めに変わって、呆れに変わってしまうのが良くないのだと思う。
「あ。映画何本か借りていい?」
「いいよ。何で?」
「内緒」
「ふーん。壊したり傷つけたら新品と交換ね」
「はいよ」
きっと、三輪さんがタイプなのは本当だと思うけれど、もう傷つかない。
私の好きという気持ちが、悟の気持ちを束縛していい理由にはならないから。
「このリンゴ美味しい」
「ね。りんご狩りみたいなやつあるのかな…」
「あるんじゃない?今度行く?」
「行く。恵も誘う?」
「お嬢さーん、そこはデートじゃないの?」
「そっか。じゃあ2人で」
「それでよろしい」