第13章 英雄ぶるのも大概に

●リコ side●　〜体育館〜


口調が荒れた天の怒号に、周囲は思わず体がビクリッと反応する。その豹変っぷりに驚いたのは確かだが、先ほどの火神が天を侮辱した言動を考えれば、それも当然と言える。


だから、ここで火神が謝罪すれば解決する…かに思われた。「早く謝れ」と視線で訴える部員たちは気にも止めず、


「ヘタレのやつにヘタレって言って
　なにが悪りぃんだよ」


むしろ相手の怒りを助長させるように、火神は天を嘲笑する。結果、事を鎮めるどころか、バスケ部員たちの肝をさらに冷やすことになった。


侮辱するだけでは飽き足らず、今度は挑発し始めた火神に、リコは内心で「なに考えてんのよコイツは？！」と叫んだ。百ゼロで火神が悪いことに間違いないのに、それに気づけないコイツは馬鹿なのか、と。


「しかもお前。
　見かけによらず頭に血ぃ昇りやすいのな？
　ますます雑魚っぽいぜ」

『んだと…！！』


天が怒りに顔を歪ませるのを前にしても、火神は歯牙にも掛けないとでも言いたげに鼻で笑う。