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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●no side● 〜体育館裏〜


「藤堂さんに会いたい?」

「「 そう! 」」


リコと伊月が、黒子と火神に頼んだ“お願い”。
それはとてもシンプルで、叶えることなど造作もないように思えた。


その“お願い”とは、「藤堂 天に会わせてほしい」。
ただ、それだけのことであった。


そして、なぜそれを黒子と火神に頼んだのか…


それは黒子と火神が、藤堂 天へと繋がる最短距離だからである。
つまりは「クラスメイトである2人に、引き合わせてほしい」ということを意味していた。


黒子は、それを聞いても大して驚かなかった。
なぜなら、先輩2人が藤堂を探していると知った時から、その可能性を見出していたためであった。


ところが、


「はぁ?そんなことかよ」

「え?」


火神は違った。


「藤堂 天に会わせてほしい」という、先輩からの懇願を受けても。
それに率先して協力しようという素振りは、決して見せなかった。


「そもそもオレ、その藤堂ってやつ知らねーし。
 人に会うだけなら、
 別に2人じゃなくてもいいだろ」

「それは…!そうだけど」


火神の言葉に、リコもつい言葉を濁してしまう。
その隙に火神は、体育館裏まで連れてこられた道を、一人で引き返し始めた。


「そっちの奴に任せるからよ、
 オレは帰らせてもらうぜ」

「あっ、ちょっと!」


リコが後ろから引き止めるのもお構いなしに。
火神の背中は、体育館裏の暗闇を後にして去って行った。


とはいえ、火神は藤堂 天が誠凛にいることに対する違和感も、そこから生まれる疑問にも気付いていた。


しかし、リコや伊月、そして黒子のように。
それを追及するだけの興味がなかっただけであった。


「もう…しょうがないわね」


こうして、火神が呆気なく立ち去ってしまったことで。
リコと伊月が取るべき手段は、必然的に一つしか残されていなかった。


「じゃあ、黒子くん。お願いできる?」

「え?」


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