第8章 大切で残酷な暖かい過去
その日はエドゥアルが帰り道で買った物を4人で食べる事になった。
レティシアはユリスの隣で静かに与えられたものを食べていた。
が、不意にユリスの服の裾が引っ張られそこを見ると幼い手が掴んでいた
レティシア
「ユリス…これ、おか……ぁ…何でもない」
そして、何やら気に入ったものがありそれをもっと食べたいと言う事だろう。
だが、途中で何かを思い出したのかレティシアはユリスの服から手を離し何でもないと告げた
それを見たエドゥアルが声を掛けようとするが、ユリスが手で軽く制す
ユリス
「レティシア、昼間にも言っただろ。俺はお前を叩いたりしねぇ。…言ってみろ、今止めた言葉」
驚く程、優しい声を出すユリスを見たエドゥアルは変化に目を丸くするしか無かった。
そんな姿を見れると思っていなかった、エドゥアルとルシアンは思わず顔を見合せた
一方でレティシアはビュッフェでおかわりを要求した時に母から初めて手をあげられたのを思い出していた。
ユリス達が優しい為ついお願いしようとしてしまったが、母が見ているかもしれない…そう思ったら言葉が止まった。
だが、ユリスに優しく促されると顔を上げ
レティシア
「さっき…ユリスが置いてくれた、やつ…食べた…い」
ユリス
「分かった。取ってやる」
ユリスが笑むのを見ればレティシアは、何度も瞬きをしてから今度はルシアンとエドゥアルへ視線を向ける
エドゥアル
「良いよ、食べな」
ルシアン
「うん、好きなだけどうぞ」
ユリスの同じ様に優しく笑って声を掛けてくれる2人にレティシアの瞳からは涙が零れていた。
ユリス
「お、おい…何で泣くんだよ…」
明らかに動揺するユリスの言葉にレティシアは何を言われているのか分からず、自らの頬に触れ自身の手が濡れれば服の袖でごしごしと涙を拭う
レティシア
「ごめ、なさい…っ」
涙を流して手をあげられた記憶に何度も何度も謝って涙を拭うも、溜め込んでいた涙は簡単に止まらなかった