第21章 対象者の壁となれ
長身の男性…キールはレティシアへ視線を向け、遠慮気味に口を開いた
キール
「あの…レティシアさんはその格好で普段、働いていらっしゃるんですか?」
レティシア
「そうだが…何か問題でも?」
露出の多い制服に10cm以上の高さがあるピンヒール…それは出会った頃にリアムも驚いた姿だった為、彼は内心キールの言いたい事が分かった。
当然だと言うように吐き出されたレティシアの言葉にキールが言葉を返すよりも先に口を開いたのは、長い髪を一つに束ねた女性のランナだった。
ランナ
「そんな格好でとは…よほど腕に自信がおありなのですね」
どこか馬鹿にしたような、それでいて苛ついている色が声に混ざっていた。それに対してレティシアは特に腹をたてる事もなく、ただランナを見詰める
ランナ
「それから、その小型魔獣は貴女のペットですか?人の命を守る仕事にペットを連れて来るなんて…どういう神経をしているんですか」
レティシアの脚元で座っているジルヴァを顎でさしながらランナは腕を組み告げる。先にまずいと思ったのはルシアンとリアムだった。彼女の様子を窺うように、ちらりと視線をやる
レティシア
「ふっ…この子はペットじゃない。私の大事な仲間であり親友で家族だ」
怒る事はせず告げるレティシアにリアムは静かに安堵の息を零す。そこへルシアンが口を挟もうとしたが、彼よりも先に二人の間に入った者がいた
キール
「ランナ失礼だろう。…すみません。真面目過ぎるだけで悪い奴ではないんです」
レティシア
「別に気にしてなどいない」
レティシアの言葉にキールが安堵するのと同時に車の後部座席を覆っていたドアガラスが下がった
ドレイク
「これ、いつまで話しておる。早く出発しないか。…おや、君達がフェリックス君が言っていた方達かね」
声の主は今回の護衛対象である、ドレイク·デイサンだった。
彼は中々、出発しない事に痺れを切らしたらしく声を掛けてきたのだった。
白髪がやや多い髪を綺麗に整えた中年のドレイクは3人を見て問い掛けたものの、次にはレティシアをじっと見詰めて不思議そうに首を傾げて唸る