第5章 助けたい気持ち
街人1
「え…それは本当か?」
街人2
「嗚呼。昨日は向かいの夫婦の赤ん坊が」
街人1
「おっかねぇな…2日前にもあっただろ」
街人2
「ありゃ確か左隣の赤ん坊だ」
街人
「何だって赤ん坊ばかり─」
リアムが特別室へ異動してきてから1週間が経った。
その頃には無事に引っ越しも終わっていた
彼が思い描いていた任務内容では無いものの、大型魔獣を鎮める事で街の人達の役にたっているんだと思う様にして日々ボロボロになりながらも大型魔獣と戦っていた
少しでもその傷を減らしたくて、レティシアやルシアン、ノアの動きを参考にしようと任務で一緒になった時は観察出来るくらいの余裕は出来た
そんなある日、リアムは昼食を買いに出た帰り道で聞こえてきた世間話に焦りながら特別室へ滑り込む
リアム
「大変だ…!」
バンッと大きな音を立てて開いた扉と共に聞こえてきたリアムの声に全員が作業を中断して、リアムの方へ顔を向けた
ノア
「どうしたの、リアムくん。そんなに慌てちゃって」
リアム
「たいっ…大変なんす」
ルシアン
「落ち着け」
ルシアンの声に落ち着かなくては、何も伝えられないと思ったリアムは無理矢理、自身を落ち着かせる
─────…
────…
レティシア
「赤ん坊の連れ去り?」
リアム
「嗚呼…!」
レティシア
「ふーん」
彼女が返したのはそれだけだった。
リアムはその返事を予想していなくて思わず肩から力が抜けてしまった
リアム
「ふーんって…た、助けなくて良いのか?俺たち守護官だろ」
守るのが仕事だろ、と鎮める事で街の人達の役にたっているそう思い込もうと過ごしていたリアムの、元々の憧れを浮上させた。
だが、レティシアは大きく溜息を吐き出して飲みかけのコーヒーを机へ置いてリアムを見上げる
レティシア
「良いか?私達は特別室だ。特別室は何する場所だ、ルシアン」
ルシアン
「主に魔獣を取り締まる場所だ」
レティシア
「そういう事だ」
リアム
「そういう事って…」
彼の助けたいという気持ちは、レティシアの鋭くも呆れた様な声によって切られた。
レティシアはそれ以上の追求は許さない空気を放ちつつ、小さいケースから白い粒を取り出し口に放り込むとペットボトルの水でそれを流し込む