第2章 二つの影
「なるほどな、影の実力者って訳だ」千空が納得する。
「まあ、あの子は自覚無いだろうけど…そんな所だね。」
「要は歌で寝返らせよう作戦で、ソイツが既に歌で魅了してる……って訳か。そりゃ面倒なこった」そう言いつつも楽しそうに笑う千空。
「えーっとそれ…突破口あるの…?ニッキーちゃーん…!もう少し情報詳しく!!」ゲンが再度、ニッキーにヘルプを求めてきた。それに応じる様に、ニッキーが補足する。
「……ひとつあるとすれば、葵はアタシと同じリリアンのファンってとこかね。
しかも、リリアンの曲きっかけにミュージシャン目指して夢を叶えてる。とんでもなくガチなファンだよ。公式でリリアンが認める友達でもあるし、リリアンのライブに出たりコラボなんかもするくらいだ。
あとゲン!アンタの声真似よりよっぽどリリアンの真似も上手いしご本人クラスだよ!!」
「ヒィーーー!!!!ゴイスーでドイヒーーー!!」
これまたゲンが涙目だ。ヘルプを求めた筈が傷口に塩を塗られた気分である。
「ククク、なるほどなぁ。リリアンのガチファンで友人とも来りゃあ、声真似で騙したりとかは到底無理だが……」
「……ああ。リリアンの本当の友達なんだ、葵は。だから……」
ーーリリアンの歌を武器に、歌手の心を手にする。
千空はレコードを手にする。
そしてニッ、と口元に笑みを浮かべた。
「おし、じゃあ決まりだ。とっとと次はその葵を連れてこい!!ソイツ仲間にしたら、後はそいつのカリスマだかなんだかで一気に引っこ抜くぞ!!」
「ああ!!任しときな!!あの子はきっと強力な味方になるからね!!」
ニッキーが答える。
(う~~~ん……)
一方、背後でゲンは思案していた。
たまたま司帝国付近で復活した、3700年間も意識飛ばさないトンデモ頭脳の持ち主の歌手。
しかも、司のカリスマ性で成り立つ司帝国で、同じようにカリスマ性を発揮しながら、異分子と追放されずにむしろ放置されてる……
(ぜ~~ったい、なんか裏があるよねぇ~、その子……。バイヤーじゃない??ていうか、そんな子が司帝国に居るとか、千空ちゃんの引きって……)
ーー残念な事に、メンタリストのイヤな予感は当たっていたのだった。