第7章 差し伸べる手
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「ニッキーちゃん」
「ああ、アンタかい!ほら、葵が来たよ!!練習の成果を見せな!?ゲン!!」
……午前中の間の担当はニッキー、そして午後が私で、ニッキーの時間は主にトレーニングで、私の時間は司帝国内部の詳細な情報の伝達や作戦立案メインである。
結果的に、午前はゲンが、午後は千空メインで話す事になる。
「ひぃ……スパルタ過ぎないニッキーちゃん…」
マイクから疲れたゲンの声がする。
「まあまあ…!一声だけ頑張って!」そう声をかけると、うう…と言いつつゲンが声を振り絞る。
「Hi! I’m Lillian Weinberg!!」
「おお~!流石特訓しただけあって前より格段に上がってますよ!精度!!」
「だろう?そりゃあもうリテイクし直したからね!」
「やった~~これでスパルタからは
「「でも南部訛りがまだまだかな……」」
ドテッ、とずっこけるゲン。えええええ…と頭を抱えている。後ろで交代で控えていた千空がまあガチファンだからな…と珍しくフォローらしきものをしていた。
「まあアタシがしごいたから声の方は大分似てきたんだけどねぇ…」
「台詞のレパートリー自体はそんなに多くないし、そこまでやらなくてもいいかもですが、リリちゃんらしさを出すならまだまだ…」
「あーーそこの講師二人。追い討ちはいいから交代しろ。生徒が死んでんぞ」千空が指摘する。
ああ、じゃあね、とニッキーが去っていく。
「じゃあゲン君は暫く喋るのしんどそうだし、今日は私と千空君メインで話そっか。優先的に伝達したい事項あるしね」電話を変わると、葵はそう切り出した。
「なんだ。軍師」直球の質問。
「クロム君の牢屋に車両特攻、絶対やめてね」
対して葵も直球で返す。千空君は良くも悪くも直球ボールしか投げないので、変に腹のうちを勘ぐる必要が無い。話していて気がラクだ。
「ククク…さては、司に計画読まれたのか、それともお前が既に仕組んでたのか?」
「司君が読んでたよ。燃料の手に入りやすさで、彼なら想像がつく」
「なるほどな。けどそれだとこっちはクロムの奴が捕まってるから、下手に手出しが出来ねえ。
軍師、なんか手を打ったか?」