第7章 差し伸べる手
「葵ちゃん…?どうしたの、その…」
「大分顔がやつれてるけど……別人じゃないか…」
げっそりとした顔付きで朝食の場に現れた葵に、杠とニッキーが心配の声をかける。
「あー…これ?昨晩、極刑に処されまして……へけえっ……」
「いつにも増して訳わかんない事言ってんね…。
今日くらい休んだらどうだい?ウチの帝国内で料理がいちばんマトモに出来るのはアンタくらいだけど、朝飯作るくらい他の男どもに任せておけばいいんだよ」
ニッキーがアドバイスするが、いや休むと…とゴニョゴニョ言いつつ、朝食作りに向かう葵。
「アレって……やっぱり羽京君かな?」
「だろうね……前言ってた簀巻きの刑、だっけ?またやられたんじゃないかい?」
溺愛というか執着というか、なんというか……。
「あはは、僕がどうかしたのかな」
ヒイッ!!!!と後ろを向く二人。
ーーそこには件の張本人であり、恐らく極刑をしたであろう、西園寺羽京が居た。
聴こえてる。聴こえた上でこのにこやかな笑顔である。
「あーーアタシらもたまには朝食作りやろうかねーー!なあ杠ー!?」
「そうだねーー!!一緒に頑張ろっかー!!」
超絶棒読みでニッキーと杠はダッシュする。……なるほど、朝食作りの時は良くも悪くも葵はファンに囲まれてワイワイ作業出来るので、羽京の入る隙間が無いのだ。二人は身をもって理解した。
「……ちょっとやり過ぎちゃったかなあ」
羽京は肩を竦めた。
でも昨晩の葵、本当に可愛かったし。
結局僕の方が仕方なく先に寝たんだよなあ。もし、敢えて寝なかったら……
ふふ、と羽京は笑みを浮かべた。
******
「……欲しいモノ?」クロムが復唱した。
「はい~!私で取って来れそうなモノなら頑張りますので」ニッコリ笑う葵。
自業自得とはいえ、昨晩酷い目にあったのでクロムに面会するまで時間がかかった。
朝食を軽く食べて、その後少し寝るしか無かったのだ。太陽が最も高くなる頃にはニッキーとバトンタッチでケータイ作戦のゲンの声真似トレーニングや千空との作戦会議がある。
…………。
場に沈黙が降りる。
「……本当に何でもいいのか?」
「取れる範囲にはなりますが~、私は良くも悪くも人畜無害な分、割とみなさん欲しい!って言えばくれるんです~」