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僕と彼女の共同戦線

第1章 prologue


「…大丈夫だよ」
愛しい人はそう言った。

「君だけに、負担はかけないから。ーー僕も一緒に行くよ」

ーー共に、誰も死なない理想郷の為に、行こう。
その声に私はハイと答えてーー

……まだ数日程か。

(思ったよりも早く来たな……通信系の機器の運搬だろうね)

「…音がした」

羽京君がそう呟いて、急いで走って行った。

何か岩盤をかち割る様な大音響は私の耳でも拾うことが出来たから、彼にはさぞかし辛かっただろう。
羽京君の走っていった方角と、聞こえてくる音を頼りに私は駆ける。

恐らく、相手は科学王国の人だ。武器を持っているかもしれないので、近寄るのは無理だがーー

人を傷付けるのも、傷付く姿も見たくない羽京君だ。上手く捕獲してくれるはずだ。
ーー私の出番は、その後である。

(……あそこか)
明らかに意図的に張られたであろう煙幕がモクモクと上がっている。少し離れた地点に潜み、じーっと音を拾う。

……今のザザーッてのは…羽京君の滑り降りる音。
つまりーー

【捕獲成功】

来た。やっと、この時が。
この科学王国との邂逅まで、実に長かった。ふたつき程度ではあるが……その間に私は『軍師』として司帝国を掌握した。穏便に、司帝国を瓦解させる為の作戦を練り、裏で手を回した。

「……今だ」

そして私は、嘘吐きの仮面を被って駆ける。


ーーこの世界で唯一仮面を被らなくていい、あの人ーー

西園寺羽京君の元へ。
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