第9章 返事
"よろしくお願いします"
どうしよう、言ってしまった。
空気はこんなに冷たいのに
体の真ん中から、じんわりと熱が広がる。
恥ずかしさで、顔を上げることができない。
あと、岩泉先輩も何も言ってくれない。
だけど、この時間は嫌じゃなかった。
「えーーーっと」
「………はい」
やっぱり先に進まない。
だけど、岩泉先輩の声を聞くだけで
また私の中のじんわりが増す。
「これから、よろしく………」
「こちらこそ、よろしくお願いします………」
先輩から "よろしく" って
相変わらず顔を上げることはできなかった。
だけど、もう一度
ほっぺたをつねってみる。
……………やっぱり痛い
「痛い?」
そしてやっぱり、呆れた先輩の声
「はい。痛かったです」
「そっか。でもつねんな」
「………はい」
顔を上げると、やっぱり呆れたように笑ってる
先輩と目が合う。
あぁ、どうしよう
こんなに幸せでいいのかな?
「岩泉先輩」
「ん?」
「私の彼氏になってくれるんですか?」
「おう」
素っ気ない返事
だけど、私に対して照れてくれてるのかな?なんて
…………やっぱりダメだ
心臓がもたない。