第5章 【毎年恒例】
12時を過ぎ、そろそろお菓子を沢山乗せた車内販売が待ち遠しくなる頃、やっとロンとハーマイオニーがコンパートメントにやって来た。
学年が1つ上がり、監督生としての仕事も責任も増えて疲れたのだろう。入ってくるや否や2人とも崩れる様に椅子に座った。
「疲れた~、なんでこんな事しなきゃいけないんだよ」
「そんなに嫌なら、監督生バッジをマクゴナガル先生にお返しするのね」
疲れていながらも優等生らしいハーマイオニーのツンとしたお小言に対し、ロンはもごもごと口を動かした。なんだかんだ文句を言いながらも、監督生を辞める気はないらしい。
そこまでしてやりたいものかと、クリスは甚だ疑問に思ってしまう。
「理解できないな。ハーマイオニーは別として、教師の雑用係がそんなに楽しいか?」
「監督生を雑用係って呼ぶ君の方こそ、僕には理解できないよ」
「マルフォイもそう思ってるのかしらね。私が見回りをしていた時、コンパートメントでくつろいでいたのよ!同じ監督生なのに!全く頭にきちゃうわ!」
ハーマイオニーは怒っていたが、あのドラコが雑用なんてするはずが無いと、少し考えれば分かることだとクリスは思った。しかし隣に座っていたハリーは、何か納得がいかないのか難しい顔で考え込んでいた。
「ハリー、どうした?」
「いや……マルフォイが――」
ハリーが話し始めると同時に、コンパートメントの扉がガラッと開いた。
またハリーのファンの子かと思ってうんざり顔で目をやると、見たことのない女の子が手に巻紙を持って緊張した様子で入ってきた。
「あのっ!私、これを届けるように言われたんですけど……」
見知らぬ女の子は、ハリーとクリスとネビルの3人に紫色のリボンが結んである巻紙を差し出した。どうやらハリーのファンではないらしい。
3人がそれぞれ差し出された巻紙を手に取ると、女の子は興奮したように顔を真っ赤にしながら去っていった。