第3章 Sketch1 --安息
住処に戻った私は衣服を脱ぎ捨て、体を清めました。
人間の魂は生まれ変わります。
それと同じく、私たちも永い年月を生きるのに休息を必要とするのです。
再び正装に身を包んだ私は、そのためにある、黒い箱の中に横たわる時、次の目覚めを決めました。
これから100年の間、私は夢うつつの中に莉奈に想いを馳せるのでしょう。
現実の彼女はいつしか私を忘れ、愛し合い、その腕の中に新たな生命を抱くのでしょう。
けれども私には、私と過ごした彼女だけが永遠なのです。
プツリ、と周りの雑音が消え去り、慣れた静寂が訪れました。
私が生まれ落ちて初めて、頬に流れるこの水が何なのか、こんな化け物には形容し得る言葉など見つかるはずもありません。
[完]