第15章 Sketch6 --双龍の嫁※
交接。
彼らとのその行為は、そう呼ばれるらしいと聞きました。
人ならざる者。
龍であるわたしの二人の夫は水と風をつかさどっています。
愛し合う。 性交。
男女を繋げるその行為には色々な言葉がありますが、異種間で行われるそれは確かにそう呼ぶのが適切なのかもしれません。
***
18歳になるまで地上にて育てられたわたしは彼らの元に嫁ぎました。
地を統べる四龍がおり、100年に一度、それぞれ一龍に捧げられる一人の花嫁。
古来よりその役割を担っている故郷ではそれにあたる時期にわたしを含めた3人の娘が居りましたが、もう一人、年ごろの女性が足りませんでした。
困った長老は彼らの元にそれを話しに行き、他の土地の娘ではどうか、と提案されたそうです。
「お前たちが日頃口にするこの大地で育った糧はこの私の血。他の土は臭くてかなわぬ」
「他の地の水をその身にしみ込ませ、汚れた者をこの湖に迎えろというのか」
「この地に吹く風と同じく、その者の息吹は私と同じではなくてはな」
「凍てつく冬にお前たちに与えている炎が途絶えてしまってもいいのか」
龍たちは口々にそう言い、特に気性の激しい火龍は眉間のあたりにいくつものしわを寄せて怒りを表しました。
恐れをなした長老は、それでは一人の花嫁を共有してはどうかと提案されたそうです。
火龍はそれを断り、元々執着の強い性格の土龍も首を横に振りました。
しかし水の龍は言いました。
「それで良い。 ただし一番の娘を私の元に」
そして風の龍も頷きました。
「一ツ所に居過ぎるのも不心になる起こりだろう」
そんな理由で、わたしは水龍と風龍の花嫁として迎られたのです。