第14章 Sketch5 --朝凪のくちづけ
「大学行ったらどうせすぐ彼氏作んだろって思ってたし、向こうで就職したらしたでまた環境変わって出来んだろとか」
「いやそれはありえないよ?」
何年片思いしてると思ってるの。
「知らねーって。 いつ来るかも分かんねえのに待つ方の身にもなれよガキ」
「ガキじゃない」
「そこ? ……んなの分かってるわ」
少し体勢をずらされ、お腹の下辺りに何だか硬いものが当たってるのが分かった。
……これって。
それで私の顔がぼっと火照る。
「ロリコンじゃねえからな。 オレは」
そんなよく分からない事を呟いている。
「……タクマさん」
「ん?」
「恥ずかしいのですけど」
もう日の出も過ぎて辺りは明るい。
そして私は上半身裸というのが今更ながらにじわじわくる。
「…………」
彼が手を伸ばして私が脱いだ上着を取り、それで私の背中をくるんでからまた羽交い締めにした。
着るために離してはくれないのだろうか。
「……あの」
「なに」
「こっちで就職していい?」
「……オマエ、今まで何聞いてた?」
「いい?」
「いー、けど。 連絡先教えろよいい加減」
「ホント!?」
「っだから起き上がるなってば!」
「ッむぐ!」
「……たく」
こういってはなんだけど、タクマさんって大抵は不機嫌そうだ。
なのでそれが彼の平常運転だとすると今は実は機嫌がいい方なのだと彼を長年見てきた私には分かる。