第49章 手放せない愛を抱えて
佐野家に到着すれば、メールで書かれていた通り、玄関の鍵は開いていた。カノトは"お邪魔します"と一言断ってから、靴を脱いで二階にあるマイキーの部屋へと向かう。
「(万次郎くんと会うの久しぶりだな…)」
コンコンッ
「万次郎くん、カノです」
「入っていいよ」
了承を得てから、ガチャッとドアを開けて部屋の中に入る。ソファーに座っていたマイキーが首だけを後ろに向け、カノトを視界に映す。
「寒くなかった?」
「平気です」
「上着貸して」
「ありがとうございます」
ソファーから立ち上がったマイキーはカノトが脱いだ上着をハンガーに掛けてくれる。
「カノ」
「はい?」
「もう無理」
「え?」
「我慢できねぇから早くギュッてさせて」
「!」
「終わったら抱きしめさせてくれるって約束しただろ?」
『終わったらたくさんギュッてさせて』
「はい」
カノトは両手を広げて待つマイキーの腕の中に飛び込んだ。そしてお互いのぬくもりを求めるかのようにギュッと抱きしめ合う。
「カノ不足で死にそうだった。オマエの愛が足りなくて元気ないから癒して」
「癒す…。どうすれば癒されますか?」
「オレのこと、大好きって言って。」
「大好きですよ、万次郎くん」
「愛してるって言って」
「愛してます、誰よりも。」
「…ちゅーしてくれたら元気出る」
「いいですよ」
身体を少し離せば、マイキーの表情はどこか寂しげだった。カノトはその気持ちが少しでも軽くなることを祈って、顔を寄せてきたマイキーと唇を重ね合わせた。
「ん……」
「カノとキスすんの、やっぱ良いな。オマエから大好きっていう気持ちが伝わってきてすげぇ嬉しくなる」
「私も万次郎くんから大好きって気持ちが伝わってきて嬉しくなりますよ」
「当たり前だろ。大好きって思いながらいつもちゅーしてんの。」
「まぁ…私も万次郎くんとキスするのは好きですけど」
小さく呟いたつもりが、マイキーにはバッチリ聞こえていたらしく、嬉しそうに笑っている。
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