第43章 執着は時として狂愛に
佐野家からの帰り道、一人にしてほしいと云うマイキーの素っ気ない物言いに、少なからずショックを受けたカノトは、落ち込んだ様子でトボトボと歩いていた。
「(あれから待ってたけど…遠くまで走らせに行ってるのか、帰って来なかったな。)」
自分に対して不機嫌になった訳でも、怒らせた訳でもないと分かってはいるが…。
「(好きな人から冷たくあしらわれちゃうと流石にヘコむ…。)」
目を瞑り、短い溜息を一つ零す。
「はぁぁ……」
すると突然、目の前を一匹の白猫が横切る。驚いて立ち止まれば、毛並みの良い白猫は逃げる素振りを見せず、カノトをじっと見つめていた。
「(野良猫…?それにしても珍しい。こんなに綺麗な毛並みしてるなんて。見たところ首輪してないけど…本当に野良猫かも。)」
「……………」
「こんにちは、白猫さん。お散歩かな?」
猫に話しかけても人間の言葉なんて通じない事は知っている。案の定、興味を無くしたように白猫はふいっと顔を背け、タタッと何処かに走り去って行った。
「あ…行っちゃった。散歩の邪魔しちゃったかな。でも、今の猫…初めて会ったハズなのに何故か気になる…」
白猫が走り去った方向を見る。普段なら気にせず帰る所なのだが、その白猫のことが何故か気になるカノトは、真っ直ぐ家には帰らず、後を追い掛けた。
「(いない。こっちに行ったと思ったのに…。)」
どこを探しても白猫の姿はない。闇雲に探しても見つかるはずはないのに、足は自然と公園へと向かっていた。
「こんな場所に公園なんてあったんだ。この辺りはあまり来ないから知らなかった」
公園の入口付近に建てられた通学路の標識。どうやらこの公園の前は、児童達が多く通る場所らしい。今は誰も歩いておらず、公園も静けさが漂っている。
「ブランコ、懐かしい。小さい頃、兄さんに後ろから背中を押してもらったっけ…。鉄棒も逆上がりが出来なくて、兄さんと一緒に練習したなぁ」
見渡せば他にも色んな遊具があった。ゾウさんの形をした滑り台、小さなジャングルジムにシーソー、砂場に水飲み場。一見どれも他の公園にある遊具と変わらないのに、カノトは不思議と懐かしさを覚える。
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