第9章 東卍vs.芭流覇羅
「羽宮くんを殺せば貴方の心は救われますか!?救われないですよね!?彼を手に掛けてしまえばマイキーくんが悲しむのは知ってます!!貴方は優しい人だから…!!お願いですから…もう…やめてください…っ」
ポロポロと涙を流す。
「これ以上…自分自身を壊すのは…やめてください…」
悲痛に叫ぶ思いが届いたのかは分からない。ただマイキーは無表情で、じっと泣き続けるカノトを見つめていた。
「ねぇ…羽宮くん…気付いてる?」
マイキーにしがみついていた手を放し、顔中血だらけの一虎に視線を向ける。
「場地さんを刺した事で、羽宮くんは、一番大事なモノを壊してしまったんだよ」
一虎は大きく目を見開いた。
「カノト…」
スッと一虎の目がカノトに向いた。
「ふたりとも…もう、やめましょう。こんな抗争続けて、誰が報われますか?場地さんがあんな状態になって、悲しんでいる人達がいるのに…どうしてまだ、喧嘩してるんです?」
悲しくて、悲しくて、心が張り裂けそうなほど苦しくてつらい。もっと他にやり方があったはずだ。抗争じゃない、もっと別の方法が。けれど彼らは戦う事を選んだ。東卍は“場地圭介の奪還の為”。芭流覇羅は“東卍を潰してマイキーを殺す為”。果たしてそこに…誰かが求める救いはあったのだろうか?
「マイキー!!!」
「っ!」
バッと振り返ると、叫んだ事で血を吐いて咳き込んだ場地がよろめきながら立ち上がる。
「オレの為に…怒ってくれて…ありがとな」
「場地さん…」
「宮村…マイキーの傍にいる事を選んでくれてありがとな。オマエになら…安心してコイツを任せられる。だからこれからも、無茶しねェようにコイツを見張っててくれ」
苦しげに笑んだ顔に泣きそうになった。
「オレは死なねーよ。こんな傷じゃあ、オレは死なねー!!!気にすんなよ、一虎。」
涙を流す一虎にそう伝え、場地は折りたたみナイフを持ち出すと…
「オレは…」
両手で握り締め、振り上げたナイフで自分の腹部を突き刺した。
「一虎(オマエ)には殺られねぇ」
next…