第12章 バイバイ…
「あ…あ…」
目の前の光景を信じられなかった。
信じたくなかった。
「あは…あははっ…あはははっ!」
赤く染まった包丁を片手に、狂気に狂ったように笑う秀一くん。
「なぁに?その目。怒ってるの?お姉ちゃん」
ギラギラと光る目。
もう正気じゃない。
「嬉しいでしょう…?邪魔者がいなくなって…さ」
ゆっくりと私に近づき、抱きしめられた。
「もうこれで、僕しか見ないよね…?」
「…」
あまりの恐怖に、声が出なかった。
「うん、かわいいよ…お姉ちゃん」
満足そうに笑う秀一くん。
立ち上がり、お母さんの身体を掴んでどこかに持って行こうとする。
「や…やめて……」
声が小さくて聞こえていないようだった。
ズルズルと引きずっていく。
と、
ドンドンドンドン
ドンドンドンドン
「すいません!誰かいますか!警察です!」
ノックと共に声がした。
その声は確かに言った。
警察と。
終わる…この悪夢が…
終わる…!
笑みすら浮かべて私は玄関に走ろうとした。
が
秀一くんは許してくれなかった。