第10章 ……和…也…
「あ…あぁ……」
頭を抱え、しゃがみこみ、ひたすら震え、言葉と言えぬほどの言葉を発する。
これが今の私にできることだった。
目の前に広がる、信じがたい光景。
「ふぅ、やぁっとスッキリした♪」
楽しげに、嬉しげに、赤い笑顔で笑う秀一くん。
私に近づいてくる。
「ひっ…!」
今度こそ動けなくなった。
「さぁて、と…?」
私と視線を合わせるように、目の前で秀一はしゃがんだ。
目が合う。
怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い
「…っ……!」
秀一の冷たい指が私の唇をなぞる。
「安心してよ、和也さんに汚されちゃったお姉ちゃんの口は僕が消毒してあげるから…ね?」ニコ
「…ぁ…」
「こんなに震えて…可哀想なお姉ちゃん…大丈夫だよ?僕がいるからね…ん…」
少し血の味がする秀一くんの唇は私のに重ねられた。
誰かと触れ合い、少なからずこの状態で安心を得た私はおかしくなってしまったのだろうか…?